人口で語る世界史



著者:ポール・モーランド

世界史というよりは、人口統計学の本と言ったほうがいいだろう。
人口が世界情勢にどのような影響与えているのか、知りたい人には面白いのではないか。

世界史とは言っているが、最近の200年間を対象としており、世界史と言うには期間が短い気がする。ただし、その間の世界の動きについてかなり細かく分析しており、近現代史としては楽しめる。

この本を読んでいてイギリスからは、アメリカに移民したのはよく知られているが、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに関してもイギリスからの移民が国を作っていると言うことを知り興味深かった。

この本の最初に語られている、人口とは軍事力であり、経済力であるというアプローチは、興味深い。そして、納得できるものでもある。
また、その人口の増減を左右する要素としては、出生数、死亡数、移民数である。
人口統計学は、社会についての意味深いなにかを伝えており、その数字を連続するものとしてとらえると、特別な変化を説明できる。また、データは何百人もの個人の物語である。

日本についても触れている。日本と西洋のはっきりした違いは移民だと言っている。移民を受け入れることによって人口減少を補うということをしていないというのだ。
また日本とロシアのはっきりとした違いは平均寿命だそうだ。ロシアの人口が減少している要因は、高いままの死亡率と低い出生率だが、日本の場合は平均寿命の伸びが出生率の低さを相殺して人口減少は遅れている。
今後も日本人の平均寿命は伸び続けなければ、人口減少は早まるだろう。つまり日本は民族的にはほとんど同質だがどんどん老いているということだ。日本の、出生率が低く高齢化する社会の姿について筆者は特に興味深いと言っている。
日本の年齢の中央値は現在46歳だそうだ、これはイタリア、ドイツとともに世界で最も高い。米国より9歳も高い。

人口でいかに世界史を語るのかということを知りたかったが、たくさんの物語の蓄積で歴史を語ることができるのだということがわかった。

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