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チャタレ-夫人の恋人

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著者:D.H.ロレンス 恥ずかしながら、エマニュエル夫人の原作本だと思っていた。 それは極端な例だとしても、ポルノまがいの小説といったイメージがある人は逆に読んでみるといいと思う。人間として生きること、そして階級の問題など、イギリスの抱える問題がしっかりと描かれている。 気になる性描写は、具体的ではないが、情熱が伝わってくる。過去において、裁判にまでなったと言うのは、今でこそ考えられないが、そういう時代もあるかもしれないと納得がいく。 チャタレー夫人ことコニーは、空っぽと称される夫クリフォードと2人で暮らしている。クリフォードは半身不随であり、子供を持つ事は絶望的だ。それでも2人は端から見れば幸せに暮らしていた。クリフォードは、誰かと子供を作るようにとコニーに言う。子供を作り、クリフォードとの子供として育てようというのだ。納得しかねていたコニーだが、ある日森番のメラーズに体を許してから、変わっていく。 コニーは、メラーズとの関係を続けるうちに、女としての自分に気づく。屋敷の召使いであるボルトン夫人は彼女に恋人がいることを見抜く。夫のクリフォードはそこまでではなかったが、コニーが何か変わったことが直感した。 この辺の描写が見事だ。 ボルトン夫人がメラーズとコニーの関係に気づいたあたりから、一気に物語が面白くなる。 中盤以降メラーズとコニーは、人間らしく生きることについて、必死になっていく。 雨の中で駆けずり回ったりすることで、機械化する世界に反抗する。 人間らしくいきることを望んでいるメラーズと、彼に惹かれていくコニーの関係は今後どうなっていくのか。それはわからないが、メラーズの質素だがしっかりとした生活は今のミニマリストにも通ずるものを感じた。 物事の本質をとらえ、堅実にいきていく。 派手さはないが、両足をしっかりと踏みしめて人生を歩んでいく人間の重みを感じた。