ユリシーズ 1
ユリシーズ 1 (集英社文庫) 著者 : ジェイムズ・ジョイス 集英社 発売日 : 2003-09-19 ブクログでレビューを見る» 知的興奮に満ちた作品。 言葉やしぐさにさまざまな意味が隠されている。 モダンアートにも似た興奮がある。 読んでいて、自分の知識や教養の浅さを感じる。それはそれで良いだろう。例えば、名画と言われるものを前にして、その素晴らしさを感じる。それだけでも十分な体験になる。 もちろんその名画を読み解くことができればより充実した体験になるだろうが、まずは名画の前に立つという経験が必要だ。 そういう意味で、このユリシーズは素晴らしい体験を与えてくれる本だ。 最近のエンターテイメントではないが、何とも言えないスリリングな展開だ。日常生活を、こんなにスリリングに描写できる作家がいるとは驚きだ。 様々な言葉が入り乱れており、わかりにくい。1種の映画的な視覚効果を生んでいる。 どうしてこんなことができるんだろうか。ジェームスジョイスの腕もあるし、翻訳のうまさもあるのだろう。文章としてのかっこよさがある。 古典文学を読む価値を感じる。 ギリシャ神話との対比、もしくは関連についてはあまり気にしないで読んでいる。照合を始めると、読み進められなくなりそうだからだ。訳注も付いているが読んでいない。文章を読む流れを止めたくない。もちろん、訳註を読みながら理解をして進めていくのも良いだろうが、それだとスピードが死んでしまう。 フィネガンズ・ウェイクで挫折したことがあるので、ユリシーズはとにかく一通り読んでしまいたい。神話とのつながりがわからなくても充分面白い。 意味のない言葉を羅列しているだけだったら、ユリシーズがこの時代まで、現代まで、生き残ると思えない。生き残っているから素晴らしいと言うわけではないが、何かしらの理由があるはずだ。古典文学と言うものはなぜ現代まで残っているのか。それはそれで1つの疑問ではある。 自分のような知識の浅い人間にとって、ジョイスを深く理解すると言うのは無理な話で、そこはもう切り捨てて、とにかく読んでみる。そこが大切なところだ。 正直難解だ、ただし、読む価値があると感じる。読んでいて面白い。今の文学はこういった知的な面白さを与えてくれるものはない。どこか表面的で、ストーリーを追っているだけになっている。その違いがどこに生まれるのかはわからない